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総合的エコロジーへの道を歩む

No.1033

総合的エコロジーへの道を歩む

愛する姉妹の皆さま

先日、ウルグアイから帰国し、宣教的霊性プロジェクト(PEMウルグアイ)の調整部門で活性化し企画された黙想会を、アメリカの管区長様方と分かち合うことができました。

アメリカの「モルネーゼ」と呼ばれるモンテヴィデオのヴィラ・コロンにある扶助者聖母会最初の家(支部)に住んだ体験は、わたしにとって、そして皆にとって、大きな喜びであり感動でした。わたしたちは、多くの犠牲、貧困、あらゆる困難の中で最初の宣教師たちが蒔いた種が、どのように発展し、アメリカや世界中に広がっていったかを自分の目で見ることができました。わたしたちにとって最も印象的で、主への感謝が促されるのは、世代から世代へと豊かに受け継がれてきた姉妹たちのいのちが、あらゆる場所で聖性の実を結んできたということの確認です。

また、10月にタイのサン・プランで行われたアジア・オセアニア大陸の管区長様方の黙想会でも、マードレ マザレロとモルネーゼの初期の共同体の姿を深め、原点に立ち戻る道を辿りました。どちらの経験においても、聖性の力強いあかしへとわたしたちを招く神の声に温順でさえあれば、あらゆる場所でカリスマが実を結ぶのを見ることができるという確信が、わたしたち全員の中に芽生えました。

扶助者聖マリアは、母として導き、わたしたちの中に現存していらっしゃいます。

わたしたちの教育と福音宣教の使命を支えていらっしゃるのは聖母であり、主はその恵みによって絶えずその使命を効果的なものにしてくださいます。いのちと人間の価値がしばしば疑問視される現代の複雑さに落胆しないようにしましょう。青少年は未来と確実さを渇望しており、今日ではこれまで以上に、自らの生き方と言葉で福音を宣べ伝える真の勇気ある証人に出会うことに開かれています。

 

神を賛美せよ、そのすべての被造物のために

 前回のチルコラーレで、わたしはすでに回勅『ラウダート・シ』に続き、教皇フランシスコがわたしたちに提供してくださったこの貴重な公文書についてご一緒に考えてみたいと思い、使徒的勧告『ラウダーテ・デウム』についてすでに触れました。

状況を把握し、手遅れになる前に何をすべきかを示しているこの公文書には、行動することへの強い決意が読み取れます。それは、気候変動の不可逆性を回避するための行動によって、決定的なものとなる可能性のある次回COP28(『国連気候変動枠組条約第28 回締約国会議 パリ協定に関する国連会議』)において、より具体性の高い交渉に向かう推進力となることを目指しています。

2023年11月30日から12月12日まで開催され、12月1日から3日まで教皇フランシスコも出席される予定のドバイ会議は、公正で公平なエネルギー転換に向けたマイルストーン(目標実現の中間地点)となるはずの会議です。この公文書では、気候変動の現状と、変化に反対し、この人為的要因の問題を避けて通ろうとする勢力とによって生じる混乱を、勇気と全体の統括能力によって、明示しています。(LD, n.5-19 )。

IPCC((Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間組織)は、気候変動に関する科学的知識の状況を評価するために、主要な第一線の専門家を集めた国連の科学者グループです。その報告書からも明らかなように、現状は、曖昧さを許さない状況です。世界の科学界と各国政府は、化石燃料の燃焼によって発生する温室効果ガスが人間と自然への主な脅威であることに『確信をもって』同意しています。それは、COP28では、化石燃料の時代に終止符を打つため、これを具体的な目標として表明する必要があるからです。

しかし、『ラウダーテ・デウム』が提示する解釈の鍵は、「文化が変わらなければ、社会で活動する人々のライフスタイルや信念が成熟しなければ、永続するような変化はなく、個人の変化がなければ文化の変化はない、ということを認識する必要がある」ということです。(ラウダーテ・デウム n. 70試訳)

教育する共同体として、わたしたちは教皇からのこのような呼びかけに強い招きを感じ、正しい情報を広め、敬意と尊重の文化とエコロジカルな回心を教育するために全力を尽くしてきたかどうかを自問することです。わたしたちは敏感な心、批判的な心、わたしたちもその一部を占めている創造の恵みに対する感謝の心を育てているでしょうか?

わたしたちが直面している課題は非常に大きいので、すべての国と主要な国際機関の貢献を必要としています。真の国際協力、多国間協力は不可欠ですが、多国間機関は長い間、安定した効果的な道を歩むのに苦労していますし、また現在、国際政治が脆弱であることが指摘されています。

そこで教皇フランシスコは、多国間機関主義の再考を求め、次の2つの点を予見しています。一つは、多国間機関が(例えばエネルギー転換において)拘束力のある決定を下すことができる可能性、もう一つは、意思決定に参加し、共同で責任を持って行うことです。  

それは「この枠組みで必要とされるのは、対話、協議、仲裁、紛争解決と監督のための場、そして最終的に求められるのは、多様な状況が表現され、包含されるようにするための、地球的な文脈における一種の進展した 『民主化』です。」(LD, n. 43試訳)

権力はエリートのものであるだけではなく、むしろ、下から、周縁から来るすべてを評価し、共通善を目的として、すべての人の利益を代表するものであることが求められます。

 

わたしたちの教育的貢献は市民性とエコロジー

 わたしたちもまた、こうした対話や相談、参加の場に積極的に参加することができます。わたしたちの組織、団体、ネットワーク、大学は、告発と提案のため意識的で確固とした声を届けることができる場になり得ます。わたしたちのネットワークは彼らの声を届けてきますか?今日、「誠実な社会人(市民)」とは、わたしたちを歓迎し、わたしたちが関わりを結んでいる地球の世界市民であり、客であると感じることです。この国を守るため、わたしたちの兄弟姉妹を守るために、あらゆる可能な道を想定し、それを追求する必要があります。

だからこそ、告発は重要ですが、反省と思考のためのスペースも必要です。とりわけ必要なのは、深く根を下ろした新たな創造の神学であり、総合的エコロジーの教育学であり、すべてがつながっていることを認識する社会的な取り組みです。

扶助者聖母会員としてわたしたちは五大陸に存在し、教育という最も強力で効果的な手段を手にしています。わたしたちはそれを見てきましたし、毎日それを見ています。それは、青少年がその点に最も敏感であると言うことす。青少年とともに、わたしたちは総合的エコロジーの道へと自分自身を教育し、彼らとともに政府や地上の実力者たちと話すことができます。

使徒的勧告 「ラウダーテ・デウム」は、最も効果的な解決策が、国内および国際的に主要な政治的決定を無視することができない時であり、同時に、すべての人が 「わたしたちの家である世界との和解の巡礼」をともにするよう求められていることを思い起こさせます。(LD, n. 69試訳)

「汚染とごみを減らし、賢明に消費しようとする各家庭の努力が、新しい文化を生み出しています。個人、家族、地域社会の習慣を変えるという単純な事実が、政治部門の責任が果たされていないことへの懸念と、権力者の無関心への憤りを募らせています。」(LD, n. 71試訳)

わたしたちはエコロジカルな回心への道をどのように歩んでいるのでしょうか?

わたしたちもまた、敏感で、何らかの行為はするものの、日常生活で不都合が生じると、実質的な変更を実践する勇気がない人々の一人となっているのでしょうか?

第24回総会が行った総合的エコロジーに関する三番目の優先課題は、まさにこの路線に沿ったものです。「ネットワークの中での教育共同体として、勇気ある福音的な選択を総合的エコロジーの観点から実践していくために、わたしたちは青少年、貧しい人、地球の叫びに耳を傾けます。」(第24回総会議事録35.3)この選択とともに、この6年間にとっての第24回総会は、総会の決意表明を通して、すべてのFMAと教育共同体に対し、「予防教育の精神でラウダート・シの7つの目標を受けとめながら、総合的エコロジーへの回心の具体的で継続的な歩みを確固として実行するよう要請することを決意しました(第24回総会議事録, 36)。

優先課題と総会の決意表明の両方に一定の条件があり、それは総合的エコロジーを教育使命の重要な側面として想定することです。

わたしたちは、「総合的エコロジーを考えるのは新しい傾向なのか」とよく自問しますが、わたしたちは、総会の決意表明を思い起こし、それをわたしたちの使命への忠実さのしるしとして、それに具体的に取り組むことによって応えます。こうしてわたしたちは、人類の不安はわたしたちの不安でもあり、わたしたちは教会に属する者であり、教会の懸念を共有し、大地から、そしてまた若者や貧しい人々のいのちから聞こえてくる叫びに呼応することを認め、それを宣言します。

わたしたちは、環境と人間のエコロジー(生態系)への取り組みもまた、信仰の重要な側面であることを確信しています。今日、信仰は人類の救いと、社会生活の構築を念頭に置いて生きなければなりません。これは、個人レベルでも共同体レベルでも、わたしたちに求められている使命です。なぜなら、これは、わたしたちが共同体を始めとし、人間関係に本来の重要性を取り戻すために、お互いに思いやるよう促しているからです。

総合的エコロジーは、深い内的回心を必要とします。それは、人間の偉大さと脆さ、そして被造物や人間性との相互関連性において、その人の中心性を問うものであるからです。

もしわたしたちが、この回心の歩みを実生活レベルで真剣に取り組むならば、それはわたしたちがいのちを生みだすものであり、宣教使命における子どもや青少年たちだけでなく、共同体の配慮をする能力が成長するために役に立つでしょう。

サレジオ霊性はその起源から、関わりの霊性です。ドン ボスコの予防教育は、まさに教育的配慮による関わりへの招きの中で生まれました。女の先生がジョバンニーノに自分の仲間の世話をするように誘う「9歳の夢」を考えるだけでも十分でしょう。

獰猛な動物をおとなしい小羊に変えるのは、神の恵みへの応えであると共に、母性的な呼びかけへの応えでもあるしょう。この点に関しては、年間を通してさまざまな視点からこの重要なテーマを掘り下げていく季刊誌『Da Mihi Animas』を注意深く読むことをお勧めします。

 

マリアは、シノドス的歩みを照らし、同伴してくださる

数日後には、キリスト教徒と、またわたしたちの会にとっても大切な無原罪の聖母の祭日に向けた準備の九日間が始まります。今年、教会の二つの重要なテキストである『シノダリタの霊性』と『宣教におけるシノドス的教会』を参照する手助けをしてくださったサレジオ家族調整部門に感謝します。わたしたちは、先日閉会したシノドスがわたしたちを招いた、歓迎、傾聴、喜び、分かち合いのシノドス的歩みのイメージとして、エリザベトに会いに行くマリアの愛のダイナミズムを観想します。

この厳かな祭日に向けての九日間は、豊かなマリア的体験であることに加え、 10 月 29 日に世界代表司教会議第16 回通常総会 第1会期が神の民に託した「総括文書」を読み、黙想する機会も提供してくれるでしょう。

これは最終文書であることを意図したものではなく、2024年10月に開催される第2会期に向けて継続しなければならない識別のためのツールです。この報告書が三部に分かれていることを念頭に置きながら、考察と祈りの中で『総括文書』を深めていただきたいと思います。それぞれの章では、対話から浮かび上がり合意した点、取り組むべき課題、提案がまとめられています。

今後数ヶ月間に、東方カトリック教会の階層組織と司教会議は、最も関連性の高い緊急の問題に焦点を当てることで、シノドスの歩みを再開することを考えています。

シノドスを特徴づけた傾聴と対話の雰囲気をわたしたち自身のものにしましょう。洗礼を受けた者として、多様なカリスマ、召命、働きの中で共に歩むことは、今日、わたしたちの共同体にとってだけでなく、暴力が横行する世界にとっても 何よりも重要だからです。

福音的友愛は実際、家の中のものすべてを照らすために、燭台の上に置かれる灯のようなものです(マタイ5:15参照)。世界は今、かつてないほどこの証しを必要としています(総括報告書-序 参照  試訳)。

平和のための不可欠な前提条件である出会いの文化のために、あらゆるレベルで協力することが重要であり、平和の構築に尽力することは、何よりも教育の業です。

無原罪の至聖なるマリアの荘厳な祭日の準備の九日間と待降節の季節を、平和のために熱心に祈るようお勧めします。イエスは真の平和ですから、それをクリスマスの貴重な贈り物として祈り求めましょう。主は平和を与えるために、わたしたちの人生の扉をノックされます。恐れることなく心を主に開き、共同体としても彼に開いていきましょう。

総評議会の姉妹とともに、あなた方とそのご家族の皆様、教育共同体、そしてわたしたちの支部に共にいる若者や青少年、子どもたちが、平和と希望に満ちた聖なるクリスマスを迎えられますようお祈りいたします。

枢機卿であり総長でもあるアンヘル・フェルナンデス・アルティメ神父様、そしてサレジオ家族の皆様に特別なお祝詞を申しあげ、お祈りを約束いたします。

とりわけ、戦争、暴力、迫害、貧困の状況の中にある教育共同体に思いを馳せ、心を合わせます。

全人類の上に、真の永続的な平和の賜物を願い求めましょう。

心をこめて皆様にご挨拶いたします。

 

ローマ 2023年11月24日

    皆様を愛するマードレ