シノドス的霊性における歩みの道程
No.1031
愛する姉妹の皆さま
このチルコラーレでは、わたしたちの会として現在取り組んでいる総会後の歩みについて、具体的な段階をいくつか分かち合いたいと思います。
まず始めに、リスボンで開催されたワールドユースデーの素晴らしい体験を思い起こしましょう。それは、今でもわたしたちの目と心に多くの場面が焼き付いています。活気があり、陽気でありながらも、落ち着いて素直に耳を傾ける若者たちの姿が記憶に残っています。
教皇フランシスコは、第37回ワールドユースデー(WYD)のメッセージの中で、リスボンに大勢の若者が参加するよう呼びかけ、若者たちはそれに応えました。わたしたちのうちで、それを経験した人は、彼らがどれほど熱意と信念を持って参加していたかを体験することができました。あらゆる文化、社会、大陸、言語の異なる国々からきた青年男女のグループが、一緒にいることの喜びを体験しながら、おだやかに街に入っていくのを見ることができました。空腹を満たすため、地下鉄に乗るため、待ち合わせ場所に出入りするために長蛇の列を我慢しなければならなかった若者たちですが、いつも笑顔で親切で、不思議なほど忍耐強かったのです。
教皇フランシスコは再びメッセージの中で、若者たちが神との出会い、兄弟姉妹との出会いの素晴らしさを体験し、長い道のりと孤独の後に、民族間、世代間の友愛の抱擁の喜びを共に再発見するよう求められました。それは、和解、平和、そして新しい宣教での友愛の抱擁。これらが実際に起こったことを、わたしたちは証言することができます。教皇フランシスコが5日間、代表者と証人を務めた一人ひとりを抱擁し、どんなときでも、彼を探し求め、彼に付き従い、彼の話に耳を傾ける150万人の若者たちに向かって、大声でこう繰り返しました。「神はあなた方を愛しておられます。神はあなた方皆を愛しています。神はすべての人を名前で呼んでおられます。」
穏やかで陽気な若者たちによって掲げられ、共にパレードをした国旗は、ナショナリズムや党派の利益、壁の建設、偏見と懐疑の中での閉鎖を支持する政策の流れに逆行する予言的なしるしでした。若者たちは、まさに世界に語りかける普遍性と平和の重要なしるしであり、現在と未来への希望のしるしなのです!
主の変容の祭日を中心とした ワールドユースデ―閉会の聖体祭儀は、教皇フランシスコにとって、運命的な問いから始まるこの強烈な恵みの一週間を総括する機会となりました。「日常生活に何を持ち帰りますか?」
それは確かに、若者に付き添うわたしたち大人にも向けられた生き方に関わる問いでもあります。
教皇は、マタイによる福音17章2節のテキストを参照しながら、変容したイエスの顔が太陽のように輝いていたことを指摘し、イエスに愛され、イエスに耳を傾け、イエスに導かれることによって、若者たちが輝くように、光り輝くようにと呼びかけられました。
彼は最後のメッセージを、聖書の中で何回も繰り返された言葉で締めくくられました。「恐れることはない。怖れないで」と。
実際、金曜日の夕方の十字架の道行きの中で、若者たちは人生からくる疲れ、孤独、現在と未来への不安、悲劇的な依存症の経験、苦悩、戦争による暴力などに伴うあらゆる結果とともに、彼らの夢を主イエスに捧げました。
締めくくりのメッセージは、どちらかと言うと司牧的で、「サレジオ」的なタッチでした。教皇フランシスコは、若者たちの脆さや疲労を無視することなく、若者たちが日々自分の力を試しながら生活している現実を観察することから始め、リスボンでの1週間が彼らの人生における単なる素晴らしい小休止に終わることなく、彼らの日常生活に繋がりをもつことができるよう、彼らに励ましと力を与えたいと願い、「恐れることはない!」「恐れないで!」と繰り返し言われました。
サレジオ青年運動の現実を具体化し、多くの青年グループに同伴した共同体とFMA会員の皆さまに感謝します。群衆の中で、わたしたちはTシャツ、旗や横断幕に見られる数多くのサレジオ的しるしを見分けることができました。
8月2日、「来なさい、生きなさい、告げ知らせなさい」というテーマを掲げ、オラトリオ形式の祝賀の日に、自分たちが共感するサレジオ霊性を共に生きることによって、ドン ボスコのカリスマの多文化性を若者たちに伝えるという目的に到達することができました。提供された貢献の豊かさ、特にサレジオ霊性運動(MGS)の若者たちが9歳の夢を創造的かつ美しく表現し、その後、前夜祭の最後の瞬間に2本の柱の夢を実現させた終盤の演出が興味深く、忘れられない1日となりました。
しかし、この夜のハイライトは、顕示台に収められた聖体のイエスの入場でした。若者たちの間に醸し出された祈りに満ちた深い沈黙は、各地域の共同体で行われている教育と養成の多くの働きを最も雄弁に物語るものでした。
毎日、特にファティマの大聖堂で祈られ、呼びかけられるマリアが、その子どもたちを守り、支えてくださいますように、心に新たな光を宿して日々の歩みを再び始めることができますように、リスボンから自分自身の生活へと!
シノドス的霊性
9月最後の週末、シノドスへの準備を間近にひかえたローマで、神の民として、和解し、他者に開かれ、平和を築く助けとなる対話を分かち合い、共に歩むために開かれる会議で、再び多くの若者が期待され、歓迎されることでしょう。
教皇フランシスコが希望し、来月30日にサンピエトロ広場で教皇が主宰するエキュメニカルな祈りの前夜祭において、すべてのキリスト教諸宗派の兄弟姉妹は、シノドス第16回通常司教会議の働きを神に委ねるよう招かれました。教皇の招きは、神の民の深い必要を担い、普段は聞くことのできない人々の声に耳を傾けることを目的としています。それは、まさに祈りと神のみ言葉を分かち合うことは、抽象的なことではなく、現実の生活の中で一貫性を強めるための呼びかけなのです。
シノドス全般の祈りと、またシノドスの内容の中で、信者に、ひいては奉献された教育者であるわたしたちにも呼びかける2つの優先事項が浮かび上がってきます。わたしたち全員が、この聖霊の出来事に備えるために読み、深める機会を与えられている『討議要綱』(Instrumentum laboris)は、今日の福音宣教は、現代の男女がどこにいても、その歩みを共に分かち合うことによって、また、特別な苦しみの中に生きる諸教会とともに歩むことから生まれる普遍性を実践することによって現れると強調しています。この意味で、シノドス的教会は開かれ、歓迎し、全ての人に向けられています。すべての人をそのダイナミックな躍動に巻き込むために、この聖霊の動きに越えられない境界線はありません。(討議要綱 26) シノドス的教会は、「キリストの愛がわたしたちを駆り立てている。」(2コリ5:14参照)と言うパウロの使徒的視点に従って、貧しい人、疎外された人、虐げられた人を含む周辺地域に手を差し伸べるよう導かれています。
本会として、わたしたちは、その組織と構造においてますますシノドス的な教会、共通の洗礼の尊厳と宣教における共同責任が確認されるだけでなく、実践される場という夢を求める『討議要綱』(Instrumentum laboris)に共鳴していると感じています。
興味深いことに、シノドス的教会は赦しの必要性を認識しているため、謙虚な教会であるということです。それは、信頼と信用の危機、和解の道を開く悔い改めと回心の必要性を特徴とする教会だからです。
「わたし」から「わたしたち」への移行を促す出会いと対話の教会、それは多様性を重んじ、唯一の霊によって結ばれた「からだ」の一部であるようにとの呼びかけに共鳴する空間を構成するからです。実に、キリスト・イエスにおいて神が与えてくださった救いをすべての人々に宣べ伝えるという、ひとつの使命に奉仕する民として、働き、霊感を与えるのは、聖霊なのです。
わたしたちは、シノドス性が依然としてすべての人にとって回心への恵まれた道であると確信しています。なぜなら、それは教会の一致を新たにできるからです。つまり、教会の傷を癒し、その記憶を回復し、各々が持っている違いを受け入れ、実りをもたらさない分裂から救い出しながら、キリストにおける秘跡、神との親しい交わり、人類全体の一致のしるし、道具として、召命を完全に生きながら実現できるからです。
共に歩もうとすることは、良い意味での不完全さの心配にも触れ、わたしたちにはまだ重荷を背負いきれないことがたくさんあるという確信に導いてくれます(ヨハネ16,12参照)。これは解決すべき問題ではなく、育むべき賜物です。シノドス的教会の不完全さと、そのメンバーが自らの弱さを喜んで受け入れる姿勢は、聖霊の働きの場となり、その現存のしるしを認識するようわたしたちを招きます。
そのためにこそ、シノドス的教会とは、この言葉が持つ豊かな意味において、識別の中にある教会でもあります。このプロセスに参加することは、修道家族として、わたしたちに委ねられた歩みと宣教の交わりの次元を、これまで以上に意識的に引き受ける助けとなります。
「討議要綱」を注意深く読むことによって、サレジオ霊性が多くの点でシノドス的霊性と完全に調和していることが分かります。わたしは例として、実践的な生き方に関する日常性の霊性を強調します。言い換えれば、それは、自分自身の任務を受け入れることから始まり、ドン ボスコが言っていたように、地に足をつけ、心を常に天に向けながら歩むことを求める召命と使命のことです。
いのちを生みだす権威のためのセミナー
どうして、管区協議会のセミナーは、「いのちを生みだす力の活性化のため」というテーマなのでしょうか。第24回総会の委託に応え、わたしたちは、統治としての権威を、福音的、かつ、サレジオ的スタイルで、奉仕として、活性化として、理解し、生きる方法を見つけるために、共に学び、深める有益な時間にしたいと思っています。わたしたちは、権威とは、果たすべき使命のことであり、権力でも、支配でもないことを確信しています。奉献生活は、変化、希望、再生に開かれた権威のモデルや行使について、何年も自問自答してきました。わたしたちは、共通の利益を求めることや、自分の責任を果たすことにおいて、全ての人の意見と貢献を促すために、福音的価値観に基づいたいのちを生みだす姿勢をもって、参加型の活性化のスタイルを育むよう招かれています。(参照 第24回総会議事録 n.15)
わたしたちは皆、自分に委ねられた人々に対して大なり小なりの責任を負っており、その責任がいのちを生みだすものとなるように、わたしたちの霊性を深めることが大切なのです。サレジオ会の伝統では、共同体、あるいはどのようなグループでも、その活性化をするように召された人々は、ドン ボスコのように、全体に対する関心を失わず、「一人ひとりのための教育学」を培い、生きるのです。
アニメーターは、調整、組織力、リーダーシップのスキルを身につけます。すべての人の成長を育むシノドス的奉仕の霊性を生きます。ドン ボスコとマードレ マザレロは、神を感じさせてくれる雰囲気と家族的精神を家の中に確実に漲(みなぎ)らせて、人間の成熟と聖性を深める歩みの条件を整えました。
会の起源を振り返ると、会の始めから家族的な精神が、権威の奉仕を特徴づけてきたことがわかります。しかし、長い年月の間に、ドン ボスコやマードレ マザレロのスタイルと比較することを難しくするようなゆがんだ形が生じたこともあることを認めなければなりません。
養成プロジェクトが扱っている「交わりのための調整」とは、共通善を視野に入れながら、すべての人を巻き込み、一人ひとりの可能性を高める生活のスタイルであり、活性化であり、関わり方であり、交わりに基づく霊性であるとわたしたちは確信しています。
アフリカ・マダガスカル管区協議会(CIAM)は、8月25日から29日までザンビアのルサカでこのセミナーを開催しました。約80人のシスターが参加した協議会内管区をまたいだ全体集会は、若さと希望と献身に満ちた雰囲気の中でしたので、ある人が「ミニ総会」と呼んほど、参加の体験を生みだしました。
9月19日から23日までフラスカーティ(ローマ)で開催されたヨーロッパ・中東管区協議会(IMC)のセミナーが、ここ数日で終わろうとしています。この会議を構成する22の管区と準管区の姉妹たちが堅実に協力して参加したことで、前向きな経験と建設的な交流が促進されています。それは確かに実を結ぶことでしょう。
わたしたちは、深め、分かち合い、選んだことを、各管区と準管区が地域の共同体と共有できればできるほど、このさらなる努力が、本会にとって有益で、また効果的であることが分かります。
養成プロジェクトとFMA教育使命の指針の改訂と更新のプロセス
わたしは、FMAの養成と教育使命のための指針について、ここ数ヶ月の間に開始された考察について、皆さまにご報告することが重要であると思います。総会議員は、会員の養成プロジェクトと教育使命の指針の文書を更新し、アイデンティティの構築のプロセス、情操と性教育、自由と責任というプロセスに特に注意を払いながら、教育と養成を再考する任務を総評議会に委ねました(第24回総会議事録 n.35参照)。
この目的のために、国際的な作業グループが設置され、さまざまな段階を経て、異なるレベルを念頭に置きながら、本会全体が参加できるよう取り組んでいます。非常に重要なこの作業の目的は、傾聴、識別、参加を特徴とする参加型プロセスを通して、上記の文書の改訂と更新を達成することです。それは、サレジアン・シスターズ、養成中の若者たち、信徒、青少年、地域教会、その他のサレジオ家族のメンバーによって受け止められるよう、教育共同体のすべてのメンバーにまで拡大されたシノドス的なプロセスです。サレジアン・シスターズとしてのわたしたちのアイデンティティのプロセスの統一性を明らかにする、段階的で、集中的に統一された道程です。
したがって、サレジオ-モルネジーノのカリスマの精神に基づく個人と共同体のアイデンティティの効果的な成長を促し、より忠実で喜びに満ちた召命への応答と、人生のあらゆる段階における刷新への絶え間ない順応性を促すことができるでしょう。それは、初期および継続的な養成の任務を委ねられているサレジアン・シスターズや教育使命に具体的な養成上の影響を及ぼすものです。当然、グループは研究と経験の面でこれまで行われたこと、文書、方法論、利用可能な資質、そして歩みの考察を評価しています。
聖霊がわたしたちを導き、わたしたちが常に、ただ神のご意志に適うことだけを本会のために選択するよう導いてくださるよう、皆さまの祈りと捧げもの、そして効果的な参加による貢献をもって、この貴重な仕事に同伴してくださるようお願いいたします。 シノドスの開始は、ロザリオの聖母に捧げられた10月の始まりと重なります。
母であり助け手であるマリアの力強い執り成しにより、教会の旅路をマリアに委ね、わたしたち自身の主への委託を新たにしましょう。
愛と感謝を込めて皆さまにご挨拶いたします。
ローマ 2023年9月24 日
皆さまを愛するマードレ